Shellman Ladies' Antique Watch & Jewelry

Toriko

アーカイブ:ブローチ【エドワーディアンとアールデコのはざま】

※こちらは旧伊勢丹店ブログ、2021年2月5日投稿分を再掲載したものです。


こんにちは。
前回ご紹介したリングに続いてもう一点
エドワーディアンとアールデコ双方の特徴を持ったジュエリーが
ありましたので、今回はこちらをご紹介したいと思います。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

とても格のあるデザインで高貴な雰囲気が漂います。
たぶん年代的にはこちらの方が10年弱は古いのではないかと思われます。



エドワーディアンのモチーフとして重用されたガーランド(花綱)は、
ヨーロッパに伝統的に伝わる飾りで、実際に花や葉、蔓などの植物を使って
装飾モチーフを作り、家の外壁や室内を飾ったものでした。



クリスマスなどに飾られるリースなどとも同系の装飾文化の一つです。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

このブローチにおいては上部に見られる月桂樹、
またはオリーブ調の枝の模様がその代表的なパターンの一つです。




起源は古代ローマ時代にまで遡り、数年前にそのために作られた葉の一枚が8,000万円以上で
落札されたことが話題になった、ナポレオンが戴冠式で着用していた黄金の月桂樹の冠も
そういった古典に由来したデザインのものです。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

ブローチの形状は盾型をベースに、
両サイドにウィング状に装飾パターンを広げ
伝統的な紋章を思わせるシルエットを持っており、
威厳や格式を重んじた貴族文化を彷彿させるものです。

同時に19世紀に一世を風靡したアーツ&クラフツやアールヌーボーに
通じるグラフィック化の影響も感じ取れ、ジュエリーのデザインが
絶えず世の動きと連動していることが伺えます。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

下部に見られる盾型の先端部分のパターンは
同じく古典様式の一つであるパルメット(椰子の葉)模様を思わせます。



それを幾何学的なラインで再構成し、アールデコの息吹をも感じさせる造形になっている点に
留まることのない時の流れと、時代を経ても受け継がれる神髄とも言える部分の双方が
バランスよく表現されています。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

このブローチの最大の特徴はオープンワーク。いわゆる透かし細工にありますが、
プラチナジュエリーにおける透かし細工で多く見られるのが、ベースとなる地金から
主要モチーフの周囲を透かし空間を抜いていく。というスタイルです。




ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

ところがこのブローチは、まずモチーフとなる4つのパートをそれぞれ作成し、
それを組み合わせることで、結果的に「余白」が透かし部分となる。という構造になっています。
そのため空間部分が比較的大きいため、各モチーフの造形がくっきりと浮かび上がります。
その効果もあって華やかさがありながら、重厚になり過ぎず着けやすいことも魅力です。





ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

■①■ 
月桂樹またはオリーブ調の枝モチーフの部分が
先述のガーランドスタイルの特徴が表れている部分です。

この部分はアールデコスタイルにありがちなフレームに囲われた造形ではなく、
植物の有機的な形状が直接アウトラインとなっていることで、伝統に基づいた様式美を感じます。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

■②■
この部分は、■①■ の植物モチーフを受ける両端のアームのようなパートと、
③を引き立てるための中央のペアシェイプ型のフレームのようなパートの、2種類の役割を持ちます。

ギリシャ文字の「Ω」の両端を延長してカールさせたような独特な形状で、
それ以前のジュエリーではあまり見ない形状です。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

■③■
このブローチの心臓部分とも言えるモチーフで、大粒ダイヤを
■①■ で使われている実のモチーフと同サイズのダイヤで上下から挟み込んでいます。

■②■の縦長の空間で囲われていますが、余白中一番大きなスペースのため、
夜空に浮かぶ一番星のごとく、重力を感じさせない光が印象的です。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

■④■
そして一番下部に位置するモチーフが先述のパルメット調の造形。

ここが一番アールデコの雰囲気が感じられる部分です。
ダイヤがセットされた部分と、繰りぬかれた部分のコントラストが
大胆かつモダンな印象を醸し出しています。



伝統的なモチーフをベースにしていますが、緩やかな弧を描くシンプルな線にアレンジ。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

このパートだけはベースから空間を透かしていく手法で作られています。



ブローチ ダイヤモンド プラチナ エドワーディアン アールデコ

ダイヤモンドは中央の大粒のものと、実のモチーフの部分にオールドヨーロピアンカット。
それ以外の部分にはローズカットと使い分けており、
単色の石使いながら光り方の違いを見せることで奥行き感を演出しています。



近代になるほど、時間の流れが速くなってくる印象が強いですが、
アンティークジュエリーが面白いのは、その瞬間の「今」を捉えつつも、
同時に悠久の時の流れという大きな時間の単位を感じさせてくれるところです。

一つ一つが全て異なる歴史を持ち、今なおその歴史の中を生き続けながら
偶然の重なりのもとに私達と巡り合ったわけです。
そう思うと感慨深いものがありますね。
ぜひその愉悦をご堪能ください。


アンティークブローチ

商品番号:CJ134
20世紀初期 
素材:ダイヤモンド プラチナ
SOLD


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