みなさま、こんにちは。
新しく産声をあげたシェルマンのブログへようこそ。
青山店、新宿伊勢丹店、バーニーズニューヨーク銀座店。
これまで三つの場所でそれぞれに育まれてきたアンティークへの感性が集まり、一つの大きな流れとなって動き出しました。
伊勢丹店最初の記事となる今回は、小さな時計メーカーが多いスイスにおいて、昔から様々なジャンルの時計を作っている総合メーカーのオメガの時計をご紹介します。

「シンプルな日常使い用の時計」においても、大メーカーゆえの幅広いデザインのバリエーションを誇ります。
今回の時計もシンプルさに於いてはそのジャンルに該当しそうなシルエットなのですが、改めてじっくり観察してみると、シンプルの革を被った個性あふれる一点なのです。
遠目に見ると決して第一印象で驚かされるといった大胆なデザインではありません。
しかしながら近づいてよくよく見ると・・・いろいろとレアなディテールが。

ベルトが時計本体に繋がっておらず、独立して宙に浮いたような状態に見えます。
もちろん本当に繋がっていなければ着用不能になってしまいますからこれは目の錯覚を利用したマジックなのです。

背面から見ると明確ですが本体とベルトを挟み込んでいるラグ部分が、底の部分でバー状のパーツで繋がっているという構造です。
正面から見るとベルトに隠れてこの部分が見えなくなるため、それぞれが独立して見えるという訳です。

一見ステンレスにも見えますが、実はこの時代のシンプル系時計としては珍しいプラチナが使われています。
当時はゴールドよりもはるかに高価な素材でしたから、このような使い方は稀有な事でした。
しかも4ヶ所のラグ部分の先端には小粒ながらも燦然と煌めくダイヤモンドがセットされています。
日常に使いやすいプレーンさと、ちょっとした華やかな場にも馴染むジュエリーウォッチとしての二つの性格を併せ持っているのです。

長方形の本体はやや広めのフラットなベゼルでダイヤルを取り囲んでおり、あたかも回廊のようになっています。
12時側、6時側の外周部はゆるやかな弓形の曲線になっていて、側面とベゼルの間に広めのスロープを設けています。
この部分に革ベルトが写り込むことで、各部分の浮遊感をより強調する効果があります。

側面とベゼル部分の境目はわずかにカーブしており光の反射がまろやかに移り変わります。
角型ながら柔らかく優しい印象になるのはこのような造形の影響です。

時計本体の形状は、石を積み重ねた城郭のようにも見えます。
その様に見ると四隅にあるラグ部分が城壁を守る物見の塔のように見えてくるから不思議です。
もう30年以上前のことですが、実際にリアルな城郭を象ったジュエリーウォッチが入荷したことがありました。
フランスの宝飾店「ブシュロン」の手によるもので、各塔の上部にはまるでドームの様にカボションカットのサファイアがあしらわれていて、それはそれは見事な完成度に感嘆したものでした。

こんな小さなオブジェにもそれぞれの地域の歴史や文化が表現されていることが少なくなく、上質なジュエリーや時計には機能だけでは測れない奥行きがある事をしみじみと実感します。
この時計が実際に城壁や塔を意識してデザインされたのかは想像の域を出ませんが、シンプルなものを壮大な何かに見立てるという文化を持つ日本人には、このような時計の魅力には案外共鳴しやすいのかもしれませんね。

写真ではなかなかわかりにくいこのようなプレーン系のデザインは、ぜひぜひ現品に触れてその魅力を体験してください。
オメガ
商品番号:D10148
1960年代
手巻き
素 材:Pt、ダイヤモンド








